「サ高住」と呼ばれる、「サービス付き高齢者向け住宅」は、安否確認と生活相談サービスが提供されるバリアフリー仕様の賃貸住宅です。老人ホームより費用を抑えることができます。以下のオプションで高齢者向け住宅アパートの詳細をもっと知る
サービス付き高齢者向け住宅は2種類ある
まだ介護の必要はないものの、老後の住まいについて漠然と不安を抱えてはいませんか?なかには、不安を解消するために、高齢者向け施設を検討している人もいることでしょう。
高齢者向け施設のなかで、「サービス付き高齢者向け住宅」、通称「サ高住」と呼ばれる賃貸住宅があります。サ高住とは、安否確認サービスやケアの専門家による生活相談を受けることができる高齢者専門のバリアフリー賃貸住宅のことを指します。
サ高住の契約は、一般的に賃貸物件と同様の賃貸借契約です。建物賃貸借契約と終身建物賃貸借契約の2つがあり、建物賃貸借契約は、入居者が亡くなった場合も契約を継続することができます。一方で、終身建物賃貸借契約は、契約者が亡くなった際に契約が終了します。
サ高住の運営元は民間事業者ですが、国の補助金制度が受けられることから、施設数が増加しています。そのためほかの高齢者向け施設に比べて、申し込みから入居までの待機時間が短く、入りやすい状況です。
サ高住は賃貸住宅であるため、自宅に近い、自由度の高い暮らしを楽しむことができます。今回は、サ高住でどのような暮らしができるのか、ほかの施設とはどう違うのか、また費用の相場について解説します。
まずは、サ高住の「一般型」と「介護型」の2種類について以下で詳しく見ていきましょう。
一般型
一般型サ高住は、独居や夫婦2人暮らしで自立している人、あるいは軽い介護度の人に適しています。一般型サ高住は、食事や入浴の時間が決まっていないことが多かったり、外出が可能であったりと、老人ホームや介護型サ高住に比べて自由に生活することができます。
サ高住の設備の特徴は、居室の広さと住宅内の全てにバリアフリー仕様が施されていることです。個人の居室や共用スペースに段差がなく、トイレや浴室には高齢者に合った高さの手すりが完備されているのが一般的です。高齢者が安全に暮らせるように隅々まで設計されています。
また、各居室には、原則としてキッチン・トイレ・収納設備・洗面設備・浴室などが用意されており、広さは原則25㎡以上確保されるように定められています。(共同で利用するキッチンやリビングなどが充分な面積である場合は各居室の広さは18㎡以上となります)
一般型の施設によっては、生活での困りごとや介護のことなど、生活全般について相談することが可能です。これらのサービスは社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員などの「ケアの専門家」により提供されます。ただし、夜間の安否確認は通報システムを利用しているところが多くなります。
さらに住宅によっては、食事提供や、掃除・洗濯の家事を援助してくれるオプションサービスを用意しているところもあります。
ただし、一般型のサ高住では、基本的に介護サービスを行っていません。そのため、介護が必要になったときは、外部の介護事業所と契約することで介護サービスを受けることができます。
一般型サ高住は、介護施設ほど廊下幅や浴室などが車いすの利用や介護向けに整備されていません。サ高住の廊下幅の最低基準は78cmですが、車いすで移動しやすい幅は90cmのため、将来、介護が必要になっても住み続けたい場合は、事前に設備を確認しておくとよいかもしれません。
なお、一般型サ高住でも入居者の介護サービスの利用を想定して、住宅内に介護サービスの事業所を併設しているところもあります。
介護型
介護型サ高住は、介護度の重い人、認知症の人にも対応しています。介護型は、地方自治体が定める「特定施設入居者生活介護」に指定されている施設です。特定施設入居者生活介護とは、厚生労働省が定めた基準を満たす施設で受けることができる、要介護者を対象とした介護サービスのことをいいます。
介護型ではキッチン・収納設備・浴室を「共用設備」としている場合も多く、一般型と比べると居室の広さは18㎡のところが多くなります。
介護型サ高住は、24時間常駐する介護スタッフや日中常駐する看護師から、生活支援や身体介護・リハビリ、レクリエーションを受けられます。
サ高住の入居費用の相場は?
サ高住の種類についてご紹介しました。サ高住の入居費用は地域や各施設によって異なりますが、介護サービスを必要としない一般型は、介護型に比べて安い傾向にあります。ここではかかる費用の内訳と大まかな目安をお伝えします。
初期費用
サ高住は賃貸住宅であるため、賃貸借契約の初期費用として、敷金または保証金が必要となるケースが多くあります。一般型の目安は家賃の2~3か月分、数十万円ほどですが、なかには、数年~数十年分の家賃を前払いで支払うケースもあります。
一方の介護型は、「利用権方式」と呼ばれる有料老人ホームと同じ契約形態のところもあります。利用権方式とは、建物に住む権利と各種サービスを利用する権利が一体化した契約のことです。入居一時金や前払い賃料として数十万~数千万円が必要になることがあります。
月額費用
サ高住は賃貸型のため、アパートや賃貸マンションといった一般の賃貸住宅と同様に、月払い方式になります。月額費用は、一般型と介護型で異なります。それぞれを見ていきましょう。
一般型
一般型で毎月支払う費用には、家賃、管理費(共益費)があります。月額の目安は、近隣の賃貸住宅の家賃相場とほぼ同じで、8~20万円ほどと考えてよいでしょう。そのほか、食費・水道光熱費・安否確認・生活相談サービスの提供費用などが月々かかります。
ただ、管理費のなかに安否確認・生活相談サービスの費用が含まれる場合もあるため、事前に確認しましょう。食事のサービスを受けた場合は、食事をした分だけ支払うケースが一般的です。そのほか、水道光熱費を支払います。東北や北海道などの寒冷地では、冬場に暖房費として費用が上乗せされるケースもあります。
なお先述の通り、一般型で介護が必要になった場合は、外部の介護サービスを利用するため、介護サービスを利用した分だけ、費用がかかります。
介護型
介護型の場合、月額の目安は10~30万円程度です。この月額費には、家賃・管理費・水道光熱費に加えて、食費・介護保険の自己負担額が含まれます。介護サービス費は要介護度に応じた定額制となり、1~3割の自己負担となります。
なお、サ高住では生活保護受給者を受け入れているところもあります。家賃や生活費、介護サービス費は住宅扶助や生活扶助、介護扶助などの生活保護費から支払われます。そのため、生活保護費で賄える費用内のサ高住を探す必要があるでしょう。
ほかの施設はどのくらいかかる?
ほかの高齢者向け施設はどのくらい費用がかかるのか気になる人も多いでしょう。高齢者向け施設はサ高住のほかに、有料老人ホーム、シニア向け分譲マンション、シニア向け賃貸住宅などがあります。これら高齢者向け施設全てに共通しているのは、バリアフリー仕様で高齢者に対応した施設設備となっていることです。
ここではそれぞれの高齢者向け施設の費用を見ていきましょう。
有料老人ホームとの違い
有料老人ホームとサ高住の主な違いは2つ。契約形態、居室の広さの最低基準です。
契約形態は、有料老人ホームでは主に利用権方式、サ高住では主に賃貸借契約となります。利用権方式の場合、入居者が亡くなるまで施設やサービスを利用することができ、入居者が亡くなった場合、契約が終了します。また上記で説明した通り、利用権方式は各種サービスを利用する権利が一体化した契約方式であるため、締結することで、さまざまなサービスを受けることが可能です。一方で、賃貸借契約の場合は、サービスの利用契約は別で結ぶ必要があります。
また、居室の広さの最低基準は、有料老人ホームでは13㎡以上、サ高住では25㎡以上です。
なお、有料老人ホームには健康型、住宅型、介護付の3つのタイプがあります。詳しく見ていきましょう。
健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは、自立した生活ができるシニア向けの施設で、施設数は非常に少ないです。入居は自立した生活が送れることが前提となります。食事提供サービスが付いており、介護が必要になった場合は、退去しなければなりません。
なお健康型有料老人ホームの一般的な費用相場は、初期費用が0~数千万円、月額利用料は10~40万円が目安になります。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームでは食事や健康管理などの生活支援サービスが提供され、介護が必要になった場合には外部の介護サービスを利用します。
住宅型有料老人ホームの場合、初期費用は0~数千万円、月額利用料は7〜15万円が相場です。
介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホームは、介護サービスの提供が前提とされていて、居住と介護や生活支援などのサービスを合わせて契約します。介護スタッフや看護師が常駐しており、施設内で24時間介護を受けることが可能です。
介護付有料老人ホームと一般型のサ高住では1日の過ごし方にも違いがあります。介護付有料老人ホームでは、リハビリやレクリエーション、食事、入浴など1日のスケジュールが決められている場合が多く、一般型のサ高住では終日自由に過ごせるところが多くあります。
なお、介護付有料老人ホームの一般的な費用相場は、初期費用が0~数千万円、月額利用料は10~40万円が目安になります。
有料老人ホームの種類別に費用をご紹介しましたが、有料老人ホームの場合、施設の設備やサポートの充実度、立地や居室の広さなどによって費用の幅が広いので注意しましょう。
シニア向け分譲マンションとの違い
賃貸借契約や利用権契約となるサ高住と違い、シニア向け分譲マンションは、マンションを購入し、所有することになります。そのため、多額の初期費用が必要であり、購入後に管理費・修繕積立金や固定資産税などの費用を支払うことになります。
シニア向け分譲マンションは、サービスの規定がないため各事業者によって内容はまちまちですが、食事や洗濯などの生活のサポート、入居者の見守りや緊急時の対応といったサービスをオプションで受けることができるところが多いです。食堂や美容室など、暮らしに便利な施設が併用されている物件もあります。
施設設備の充実度はサ高住よりも高い場合が多く、資産として残すことが可能です。
初期費用はおよそ数百万~数億円、月額利用料は10~20万円です。シニア向け分譲マンションは設備やサービスが充実している分、高額になる傾向があります。
シルバーハウジングとの違い
民間が運営しているサ高住と違い、シルバーハウジングは公営です。公営団地を改築して用いられている場合が多いです。生活援助員による、安否確認や緊急時の連絡などのサービスを受けることができます。
シルバーハウジングは公的機関が運営しており、サ高住と比べて割安に利用できる施設が多いため、シニア層から人気を集めています。入居要件が設けられており、入居者を決める際には抽選になることも多く、すぐに入居できない可能性がある点に注意しましょう。加えて、スタッフによる介護サービスがないことも覚えておきましょう。
初期費用として敷金を家賃の1~3か月分、支払う場合が多いです。一方で、礼金は不要になります。月額の家賃は公営住宅の場合、所得に応じて月額1~10万円程度の減免があります。
シニア向け賃貸住宅
シニア向け賃貸住宅とは、シニアが安心して暮らせる企画・設計がなされた賃貸住宅のことです。入居は元気なシニアが適しています。
サ高住との違いは、安否確認や日常生活のサポートといった生活支援の規定がないことです。介護サービスや生活支援が必要になった場合は、自分で外部のサービスを探し、契約をしなければなりません。
シニア向け賃貸住宅の初期費用は数十万円、月額利用料は10~20万円です。
費用が足りないかも…どうする?
シニア向けの住宅を検討しているけれど、費用が足りるか心配な人もいるでしょう。費用が足りない場合の対応策を以下でご紹介します。
介護サービスには介護保険が使える
介護が必要になった高齢者を社会全体で支えていく制度があります。ただし、介護保険のサービスを利用する際は以下の条件を確認しましょう。
・第1号被保険者(65歳以上):要介護・要支援認定を受けている
・第2号被保険者(40〜64歳):医療保険に加入し、16種類の特定疾病に当てはまり要介護・要支援認定を受けている
上記に当てはまる被保険者は、要介護度に応じてさまざまな介護保険サービスを利用することができます。介護サービスは、所得に応じて定められた自己負担額(1~3割)で利用できるため、介護費用の負担を減らすことが可能です。介護保険制度を利用するためには要介護認定を受ける必要があります。詳しくはこちらを参考にしてみてください。
生活保護という手も
介護保険以外に、生活保護を受けることもできますよ。サ高住、有料老人ホーム、グループホームなどでは生活保護者を受け入れているところもあります。生活保護を受けている人は、介護サービスを自己負担ゼロで受けることができます。
持ち家を売却すれば費用を捻出できることも
持ち家を売却して費用に充てるのも1つの方法です。サ高住や老人ホームに入居するには、まとまった資金が必要になります。サ高住や老人ホームに入居する際、持ち家に住む人がいなくなる場合は、持ち家を売却することで資金を作ることができるでしょう。
また持ち家を売却すると、家を管理する費用も必要なくなるため、その分のお金を老後の生活に充てることができます。三井不動産リアルティのシニアデザイングループでは持ち家を老後生活の資金に活用するご提案もいたします。
サ高住の入居条件とは?
サ高住やそのほかの高齢者向け施設の費用をお伝えしました。一方で、サ高住への入居には、連帯保証人・身元引受人を必要とするケースが多い傾向にあります。また、サ高住の一般型と介護型では以下のような条件があります。どちらも条件が合えば同居が可能です。入居の条件とともに、同居の条件を以下の表にまとめました。
種別 | 居住者の条件 | 同居する人の条件 |
---|---|---|
一般型 | 60歳以上で自立~介護レベルが軽度の人 ※要介護認定を受けていれば、60歳未満でも相談可 | ・配偶者(事実上の夫婦と同様の関係にある人も含む) ・60歳以上の親族 ・要支援・要介護認定を受けている親族 ・特別な理由で同居の必要があると知事が認める人 |
介護型 | 60歳以上で自立~要介護5の人 ※要介護認定を受けていれば、60歳未満でも相談可 | ・配偶者(事実上の夫婦と同様の関係にある人も含む) ・60歳以上の親族 ・要支援・要介護認定を受けている親族 ・特別な理由で同居の必要があると知事が認める人 |
また、一般型の場合は、上記の条件に加えて、以下のような条件を付けていることが一般的です。
・自立した生活ができる(介護保険サービスの利用者も同様)
・認知症ではない
なお介護型の場合は、介護度の重い人、認知症の人にも対応しています。運営事業者によって、要支援・要介護認定を受けた人のみを対象としているところもあるので注意しましょう。
サ高住の特徴を理解して老後の住まいを適切に選ぼう!
サ高住は、高齢となった夫婦や単身者が抱える生活の不安と、高齢の居住者の入居受け入れに足踏みをする賃貸物件のオーナーの状況を背景に、2011年「高齢者住まい法(高齢者の居住安定確保に関する法律)」が改正され、創設されました。
その後、サ高住は戸数を増やし、2022年11月末には約28万戸となっています。しかし一方で、人口の3割余りが75歳以上になる2025年には、高齢者向け賃貸物件が不足する、という予測もあります。現在、高齢者向け施設の供給を促進する施策が各所で行われている最中です。
一般型サ高住は自立した高齢者が安全に生活しやすい設備が整い、外出も自由にできるうえに、自炊もできます。ただ、将来介護が必要になったときのことを想定しておかなければなりません。どの程度の介護状態まで入居できるのか、受けられる介護サービスは何かなどを事前にしっかり確かめておきましょう。
介護型の場合は、介護が必要な高齢者に適切な介護サービスを提供してくれます。それぞれの特徴をよく理解して、自分の暮らしのスタイルや費用、心身の状態に合った住まいを探すことがポイントです。
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